三木聡さん監督の映画『亀は意外と速く泳ぐ』は、2005年に公開されたスパイコメディー作品。
ごく平凡な主婦の超平凡な日常が、あるポスターを発見したことで一変!?
ここでは、作品のあらすじや魅力をご紹介します。
※ネタバレにはご注意ください。
『亀は意外と速く泳ぐ』あらすじ
毎日家事をこなし、ペットの亀に餌をあげる。単身赴任中の旦那から毎日電話はあるものの、亀の話ばかり。主婦のスズメは「平凡」な毎日に退屈を感じていた。
ある日、幼馴染のクジャクとの待ち合わせ場所に向かっていると、超小さな「スパイ募集」のポスターを発見する。
電話をかけ、相手に言われるままにアパートの一室を訪ねると、そこには「ある国」のスパイだと言うクギタニ夫妻が待ち受けていた。
スズメを見て、「あなたのような平凡バカは珍しい」と平凡な人ほどスパイ向きだと評したクギタニ夫妻。
かくして活動資金の500万円を受け取ったスズメは、この日からスパイとして活動することになるのだった。
主な登場人物
片倉スズメ(上野樹里)
夫が単身赴任中の平凡な主婦。刺激のない毎日にちょっと退屈なご様子。「スパイ募集」のポスターを発見し、スパイになるために奮闘する。
上野さんは確かこの映画公開当時は19歳だったと思うので、めっちゃ若い主婦じゃん! って思ったんですけど、終始ナチュラルで素敵でした。
扇谷クジャク(蒼井優)
スズメの幼馴染み。地味なスズメとは対照的に、服も性格も派手で自由。洞窟で暮らしている。
派手! 豪快! でも嫌みがない! 最高にクールな役でした。蒼井さん、どんな役でもハマる。
クギタニ夫妻(岩松了、ふせえり)
どこにでもいそうな夫婦に見えるが、とある国のスパイらしい。かれこれ12年間、指示が来るのを待ち続けている。
三木作品の常連なおふたり。独特な空気感と、ゆる~いテンションについつい見入っちゃいます。
小ネタ満載の超ゆるゆる脱力系コメディ!
スパイものに当たると言えばそうなのですが、本作は8割がコメディ。監督の三木聡さんらしい、大爆笑というよりクスッと笑える小ネタが随所に見え隠れします。
お手洗いの洗面所で大音量のオナラをされる、かりんとうを一晩水に浸けておくとかなりやばいものになる(う〇こじゃん!)、親子で突然相撲をとるなど、あちらこちらで展開される絶妙な三木ワールド。
このゆるゆる加減は、好みが大きく分かれそうなところですが、私は何度も見ている大好きな作品でございます!
個人的に衝撃を受けたのは「暇つぶしにストローで肝臓を作る」でしょうか。ちょっと意味が分からなさすぎて、クスッとなってしまいました。物語の最初の方、一瞬のことなんですが、ぜひ本編で確認してみてください。
あと、「永久パーマ」をかけたスズメの姿にも注目していただきたいですね。
無駄!? に豪華な俳優陣
スズメの初恋の人で、いい具合に気持ち悪さを放つ加東先輩に要潤さん。踊りの得意なパーマ屋の店主に温水洋一さん。そこそこな美味しさのラーメン屋の店主に松重豊さんなど、脇役には豪華な俳優陣!
かなりクセのあるキャラクターだらけで、物語に直接関係がない部分にも花を添えています。
伊武雅刀さんと嶋田久作さんの不思議な体操とかも見ものですね。無表情で淡々と会話しつつ動くのもツボでした(笑)
誰一人普通じゃないです (笑)
「普通」だって、面白い!
クギタニ夫妻に、何かあれば本国から連絡があるからと、「その時」まではスパイであることを隠し「普通に暮らす」ことをスズメは言い渡されます。
いつもと変わらない生活でも、それがスパイ活動の一環だと思うとなんだかワクワク。冷蔵庫に入れた活動資金の500万円を眺めつつ、なんだかスズメのテンションは上がります。
しかしすぐに、「普通とはなんなのか」という疑問でいっぱいに。そして、普通でいようと意識すればするほど、普通ではなくなってしまいます……。
普段生活する中で「普通」を意識することなんてないですよね。でも、普通でいようと思って生活すると、普通ってすごく難しい!
「普通」も、視点を変えれば結構面白いんだと気づかせてくれました。実は普通でいることが一番非凡で、一番幸せなことなのかもしれません。
「その時」は訪れるのか――!?
基本的にはゆるゆるコメディですが、終盤にかけてスパイ映画らしい緊迫感も増していきます。
目立たぬようスパイ生活を送るスズメ。あるとき、秘密の場所でクギタニ夫妻にピストルを手渡されます。さらに後日、緊急招集のアナウンスについて教わり、徐々に「その時」が来るのを肌で感じ始めるのですが……。
果たしてそのときは本当に訪れるのでしょうか? もしそのアナウンスが流れたとき、はたしてスズメの運命は……?
『亀は意外と速く泳ぐ』感想
とんでもない事件が起こるわけじゃなく(いや、起こらないわけでもないんですけど)、割と淡々とゆるーく物語は進んでいくので、なんとなくのんびり映画でも見ようかなと思ったときに見てほしいなと思います。
「普通」「平凡」と連呼する割には、物語は奇想天外だし、登場人物もみんな変わり者。そんなところにも、なんだかまたクスッとしちゃいます。
当たり前で平凡な日常も、考え方ひとつで輝くというのがいいなって思いました。こうやってブログを書いているのも、スパイ活動だと思ったら楽しいかも……。